1月28日に、個人で東京電力に損害賠償を求めた裁判の口頭弁論を傍聴してきました。東京に住む原告の方が、福島第1原発が爆発して東京も被曝の危険があったということで10万円の慰謝料を求めたものです。訴えが起こされたのは2011年で、この裁判を傍聴するのは今回初めてです。原告弁護団として10人近い弁護士の方が勢ぞろいする豪華さに比べ、傍聴人は私を含めて3人というバランスの悪さ。今やってる都知事選の争点のひとつに「脱原発」がありますが、この状態では「そりゃ、東電も原発再稼動とか強気に出るよな」と思いました。原発被害に誰も関心無いということですからね。

裁判の方は、のっけから、やけに不機嫌な裁判長が怒った口調です。原告と被告の双方で、必要な書面を出したとか出してないとかやっていて、良くわかりませんが緊迫した様子です。原告弁護団長の紀藤正樹弁護士が冷静に「原告の主張の骨子は提出済みです。個別の請求原因については、まだこれからです」と説明したところ、次回までに被告の反論書面が提出されることになりました。だいぶ煮詰まってきている感じだと思われます。それにしても、この裁判長は、なんでこんなに不機嫌なんでしょう。

さて、原発事故を巡っては、東京都の水道水から基準値超えの放射性物質が検出され、安全な水の確保に右往左往したことは記憶に新しいかと思います。東電はそのような「恐怖感」に対し答弁書で

仮に原告が「極度の不安感、恐怖感」を持ったとしても、それは原告個人の考え方、性格、感受性等の個人的資質に基づく特異な事象

と述べ全く意に介す様子はありません。東京は、ずっと安全だったという主張です。私も当時、Amazonで注文したミネラルウォーターが「お客様にご注文いただいた以下の商品が、仕入先から入荷の見込みがないことがわかりましたため、やむを得ずご注文のキャンセルをさせていただきました」などと一方的にキャンセルされるなど水の確保に苦労し、1リットルあたり300円くらいするような高い水を購入したことを思い出しました(1)。放射能のことばかり考えていても気が滅入るだけなので意識の外に追いやっていましたが、公開されている裁判の資料を読んでいると、当時の恐怖が思い起こされ涙が出てきました。

風評被害が「賠償すべき被害」として認められるんですから、普段買わない水を「買わされた」被害もきちんと賠償して欲しいものです。今後も本裁判を傍聴し、原発問題はれっきとした消費者問題であることを伝えていきたいと思います。

参考:

水道水から放射性物質 東京都 水ボトル24万本 乳児家庭に配布へ(NHKニュース)

2011.03.23

 東京・葛飾区(カツシカク)にある都の浄水場の水道水から1歳未満の乳児の摂取制限の指標を上回る量の放射性物質が検出された問題で、東京都はこの浄水場の水を利用する東京23区と多摩地区の5つの市で、水の確保が難しくなっているとして、乳児のいる家庭を対象に、あす、ミネラルウォーターの入った24万本のペットボトルを配ることになりました。

 東京都葛飾区にある都の金町浄水場(カナマチ)の水道水では、きのう、放射性ヨウ素131(ヒャクサンジュウイチ)が1歳未満の乳児の摂取制限の指標の2倍以上にあたる1リットルあたり210ベクレル検出されました。

 東京都は、 金町浄水場の水道水を利用する東京23区と武蔵野市、町田市、多摩市、稲城市(イナギシ)、三鷹市で乳児に限って水道水の摂取を控えるよう呼びかける一 方、この地域の事業者や保育園などの施設に対しても、1歳未満の乳児が飲む可能性のある飲み物や離乳食に、この水道水を使わないよう呼びかけています。

 東京都水道局は、今夜、記者会見し、東京23区と多摩地区の5つの市の店などで、ミネラルウオーターの買い占めなどが起きて水の確保が難しくなっているとして、あす、550ミリリットルのミネラルウォーターの入ったペットボトルをあわせて24万本配ることを発表しました。

 この地域には、1歳未満の乳児、およそ8万人がいて、配布する対象は乳児のいる家庭に限定し、あす、準備ができ次第、23区と対象の市を通じて、乳児1人あたり3本を配ってもらう予定です。

 都が配るミネラルウォーターは、硬度が低く、赤ちゃんの腎臓に負担がかからない軟水で、東京都は追加の提供も予定し、業界に対しては、ミネラルウォーター入りのボトルの増産を要請することにしています。

  1. Amazon以外からもキャンセルされることが相次ぎましたが、在庫以上の注文を受け付けて一方的にキャンセルする「キャンセル商法」も、どうにかして欲しい。


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