株式会社はてなに対し、発信者情報の開示と損害賠償を求めていた裁判の判決が1月21日に行われ、はてなに対して「発信者情報を開示せよ」との判決が出ました。残念ながら損害賠償は認められませんでしたが、はてなの主張していた「ウェブサイト管理者はネット上の著名人なので、住所の公開はプライバシー侵害では無い」などという荒唐無稽な主張は却下され、勝訴しました。

事件の概要としては、

  1. 2008年3月、はてなのコメント欄に複数の人物の住所・氏名とともに私の住所・氏名が羅列されていたのを発見
  2. 同月、「はてな発信者情報開示の流れ」に従って、発信者情報開示請求
  3. 2008年6月までに、開示も開示拒否の連絡も無かっため提訴
  4. 2009年1月21日に判決言い渡し

というものになります。

私としては、

  • 住所を不特定多数に知られると身体に危険が及びかねないため、投稿はプライバシーの侵害にあたる
  • 書き込みの態様(以下図)から言って、公益目的では無いことは明らかなので、開示しないことは違法
  • はてなの定めた規約には『開示・非開示の決定内容を連絡する』と書いてあるのに、何の連絡もしなかったことは違法

と主張したところ、

図) 投稿は、単なる住所の羅列であった(クリックで、全体を表示)
なお、投稿者とページ管理者のハンドルは同じですが、別人であることが訴訟の中で分かっております。

対する「はてな」としては、

  • 書籍を出版し、インターネット上のサイトを運営しているから、無名の一般私人では無く、住所が公表されたからといってプライバシー侵害では無い
  • サイトの管理者に対しネット上で批判があることは当然であって、本件書き込みも、表現意図が書き込み中に無いとしても、それを考慮する必要がある
  • 本件書き込みがプライバシー侵害ではないと判断したからといって、重大な過失は無い
  • 発信者情報開示の流れは「約款」では無く、「非開示の決定を連絡する」と書いてあるからといって連絡する義務は無い

と反論してきました。

それで、裁判所の判断としては、

  • 1冊の書籍の発行やサイト運営だけで著名人ということは出来ないし、仮に著名人だとしても消費者問題およびインターネット上のものであるから、住所の公開はプライバシー侵害である。発信者情報を開示せよ
  • 住所の公開がプライバシー侵害にならないと誤り考えたことは、軽過失にあたるとしても重大な過失ではないから損害賠償は認められない
  • 「発信者情報開示の流れ」は、手続きを定めるものに過ぎず、「非開示の決定」について連絡する義務は無いから損害賠償は認められない

というものでした。

私としては、「住所の公開はプライバシーの侵害」と裁判所が判断したことは当然としても、「住所の書き込みであっても、訴訟外で発信者情報開示する義務が無い」としたことは、「泣き寝入りを助長する」ものであって不当だと思うのですが、皆さんは、どう思いますでしょうか?普通の人が裁判を起こすためには弁護士に頼まなければならず、弁護士を頼むとすれば発信者情報開示請求だけで20?30万円は掛かるので、かなり難しいかと思います。しかも、IPアドレスが分かったからと言って、訴訟によって開示が遅れれば、本人を突き止めることは出来ません。

さらに、代理人の落合洋司弁護士によると「はてなは法務部も無いし、はてなが直接開示するという前例は無いので、開示は遅くなります」とのことですが、この期に及んで、きちんとした対応体制の整備を行う気も無いようです。

現在、控訴するかどうか検討中なので、よろしければご意見をお願いします。

参考リンク:

御堂岡啓昭から、悪マニを守る会
裁判資料の一部は、こちらの会員向けページで公開しております。

実名の卑怯者、池田信夫が何か言ってるな


Tags