ライブドアの粉飾決算で「ほりえもん」らが逮捕され、その株価が1株700円→70円に爆下げした被害に関する被害者説明会が、3月5日(日)に行われたため、れっきとした被害者である私も行って参りました。

主催は、これまで消費者問題を取り扱ってきた弁護士50名弱によって結成された、ライブドア株主被害弁護団です。弁護団の中にも、「消費者問題とは違うのではないか?」と議論があったそうなのですが、これだけ被害者が多く出ている現状(*1)を見て「不正義を放置できない」と言うことで、結成されたそうです。会場には、500人以上の被害者が集まっていました。

で、いろいろと詳しい説明があったのですが、端的に言うと

  1. 偽装が無かった場合の「真の株価」を仮に求め
  2. 購入金額との差額を被害として、ライブドア(および役員?)に請求する

とのことでした。まあ、歴史にif が無いのと同じように、「真の株価」なんて求めようが無いのですが、それだと訴訟を起こすことすらままなりません。そこで、出来るだけ被害者に有利になるようプラス・マイナスを考え、ライブドアの真の株価=184円と仮に設定したそうです。そして、そこから求められる裁判費用(印紙代)や最低限掛かる通信費・コピー代などを勘案した結果、

  • 着手金 = 被害額(購入株価 − 184円) × 2.5% + 15,000円 = 1審判決までの全費用
  • 成功報酬 = 取り戻せた額の 10%

として、弁護団に依頼するための費用が決まったそうです(被害金額などにより、多少の変動はあるかもしれません)。弁護士に頼む相場は、被害額300万以下の場合で、着手金8%/成功報酬16%+印紙代などの実費、3000万円以下の場合で、着手金5%/成功報酬10%+実費ですから、団体と言うこともあり割安になっているようです。

さて、ある程度概要が分かったところで、質疑応答の時間になりました。最初の質問者は、なんとライブドア被害者の会の主催者です。「1000人の会員を代表して質問します」と、長々と質問していました。この人に限らず、愚痴なのかなんなのか良く分からない質問者が多かったのですが、最後の質問者がまた強烈でした。

質問者 「 消費者問題の弁護士がボランティア的に関わっていると言っていますが、もし1000億円分の被害者が集まれば、着手金だけで25億、弁護士一人当たり5000万円の収入です。成功報酬は、100億円にもなります。濡れ手に粟で、儲けを目的に、やってるんじゃないですか?

と言う質問です。なぜか、会場の一部からは拍手が起きていました。最初に質問した、被害者の会の人も拍手しています。途方も無い仮定の話を持ち出して非難する人も非難する人ですが、拍手する人も拍手する人です。弁護士の相場を知らないっていうか、被害額が平均1千万円でも1万人ですよ(最低でもライブドア全株数の15%以上、浮動株の30%以上を集める計算。ちなみに、フジテレビの持ち株比率は12.7%)。しかも、全額回収出来るはずもありません。

その回答は、次のような感じでした。

弁護士 「 弁護団としては、1000億円なんて想定してなくて、被害額の合計としては、せいぜいその10分の1、もしくは100分の1程度しか集まらないだろうと考えています。また、(被害額に比例する) 2.5% のうちの 0.5%は印紙代ですから、弁護士の手元には残りません。
いくらボランティアと言っても、無報酬では活動を続けること自体が困難ですし、そういう意味でも勝訴した場合は、ある程度の成功報酬と言うのが必要だと思います。
回答者 「 失望しました。わざと捻じ曲げていて、私の質問の答えになっていません。
会場 ここで、また拍手

でた!「失望しました」!

掲示板の管理人を長いことやっていると、「失望しました」と良く言われるのですが、ハッキリ言ってこんなことを突然言い出す人は、最初から期待しても無いのに「期待が裏切られた」被害者の振りをする、「プロ市民」や「クレーマー」だけです。当サイトも説明文のところに「プロ市民のためのサイトです」なんて書いていますが、「本物」を見たのは初めてです(笑)。期待しているなら、仮定を持ち出した攻撃なんてしないでしょうし、真面目に議論する気があるなら、感情的な語句で議論を打ち切ったりはせず、論理的な反論をするはずです。

回答していたのは、弁護団長の人でしょうか?なんだか妙に人の良さそうなオジさんで可哀想だったのですが、仮にも弁護士ですから慣れっこなのかも知れません。それよりも、質疑応答で沢山手をあげた中から(私も手をあげてみたが指名されなかった)、たちの悪い人ばかり引く、司会進行役の弁護士の方の「引きの弱さ」が気になります(笑)。

まあ、500人も集まれば、批判的な人も混じっているのかもしれません。えてして被害者と言うのは、悪徳業者の言うことは信じても(信じたから被害にあっている)、弁護士の言うことは信じないものです。しかし、ふと思ったのは、「弁護団が高いように印象付け、甘い言葉で被害者を食い物にしようとする2次被害業者の仲間なのかも」と言うことです。実際、検索エンジンにて「悪徳商法」を検索してみると、2次被害を狙うような怪しげなスポンサーサイトが多数見つかりますし、そのようなタイプの悪徳商法が急増しています(2月28日の講演にて、「一見信頼できそうな、新たなタイプの有害サイト」として実例を挙げて解説しました)。どう頑張ってみても、弁護士以外が訴訟代理人となることは出来ませんし、結局、弁護士に頼むのであれば、相場が大きく変わるとも思えません。また、提携弁護士なる悪徳商法もあります。

と、ちゃんとサイトの趣旨に繋がったところで、私の場合は固定費用の方が高い程度の被害額なんですが、せっかくなので依頼してみたいと思います。

壇上に勢ぞろいした、弁護団の方々

(*1) たまたま、ライブドア事件の直後に行われた「金融被害110番」では、そのほとんどの相談がライブドア被害に関するものだったそうです。


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