アムウェイ問題や武富士盗聴事件で有名な山岡俊介氏のブログがあることを最近知ったのですが、どうにも変なことを書いています。

詐欺犯の罪、罰は当然ではあるが、被害者側の“欲”もまた、問題である。ところが日本では、当事者の責任を問う声はあがらない。欲をして被った被害者であっても“被害者面”して騒げばなんとかしてくれる…、そんな甘さが渦巻いている。アメリカは当事者責任が徹底している国ゆえ、この手の詐欺はあまりみかけない…、

情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ)より

たしかに、「騙された方も悪い」というのは一面においては正しいと言えます。たとえば、法律でも

  • 脅迫によって奪われた物を、第3者に転売されても取り返せる

のに対し、

  • 詐欺によって奪われた物を、第3者に転売されたら取り返せない

など、騙された人にも一定の責任を課すようになっています。

しかし、責任には濃淡があり、詐欺師の方が圧倒的に悪いはずです。その大小関係を曖昧にし、同列に扱うことで、議論の本質をずらし誤った方向に導くのは詭弁です。また、「今の自分は騙されないに違いない」と思ったからと言って、「誰でも同じ程度の知識や経験を持っているはずである」と言う思い込みは、いかにも想像力が足りないと言えます。

「騙されるような馬鹿には、管財人とか後見人でも付けておけ」と建設的(?)な批判をするのならともかく、単に「お前らは俺より馬鹿」と言っているようにしか思えない記事を載せて、何の意味があるのでしょう?

また、そもそも、「アメリカは当事者責任が徹底している」と言うのが、全くの嘘っぱちです。日本は、ヤミ金の収益を国が没収できないことからも分かるように、被害者が、自己責任において被害回復を図る原則が徹底しています。国や警察は全く手を貸してくれません。騒ぐのをためらい犯罪収益が残った場合は、詐欺師の丸儲けとなるシステムです。

一方アメリカでは、国が犯罪収益を全て没収し、被害者に配当するシステムが非常に充実しています。被害者が、役所に置いてある「全てお任せします」と言う書類にサインをするだけで、国や警察によって、数ヵ月後には被害が回復されるようになっています。日本のように、「騙された」と騒ぐ必要もありません。単にサインをするだけで、お金が戻ってくるのです。これは、犯罪収益を犯罪者に残さないためなのですが、国に守ってもらっている国民を引き合いにして、「アメリカは当事者責任が徹底している」とは全く持って変な言い分です。

参考: 不当利益吐き出し、金銭的制裁の日米比較(国民生活センター)

日本では、「誰かが何とかしてくれる」などと甘い考えは通用しません。ヤミ金の場合は報復を恐れながらも、世の中の「悪」と戦っているのです。そのような事情を伏せた上で、「“被害者面”して騒げば」などと平気で載せ、結果として詐欺師の片棒を担いでいる山岡氏には憤りを感じます。

なお、文責の「マイク・アキオステリス」なる人物をgoogleで調べたところ、他のサイトは1件もヒットしないため、単に山岡氏の別ハンドルかと思います。批判の矛先が自分に及ばないよう、ダブハンを使っているのでしょう。


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