私が出した移送申立書と、株式会社ウェディングの意見書を載せておきます。

平成16年(ワ)第510号 損害賠償等請求事件
原告 株式会社ウェディング
被告 吉本敏洋

移送申立書

平成16年3月28日

被告 吉本 敏洋

京都地方裁判所 第6民事部い係B 御中

 上記当事者間の貴庁平成16年(ワ)第510号損害賠償等請求事件について、次のとおり、訴訟の移送の申立てをいたします。

申立の趣旨

 本件を東京地方裁判所へ移送する。
との決定を求める。

申立の理由

1 被告吉本敏洋の住所は、訴状当事者目録記載の通り東京都(中略)であり、御庁からあまりにも遠隔地にある。

 本件については、インターネット掲示板に関する事件で前例が少なく、表現の自由について憲法上の法律論が展開されるなどして訴訟が長期化するおそれがあるが、遠隔地であるが故に当事者の日程の調整が難航することによって著しい訴訟遅延を招くおそれがある。

2 また、被告は個人であり、御庁への出頭に要する時間的・経済的負担は甚大である。被告が御庁に出頭するためには往復1日間の出張が必要となるため、仕事を休まなければならないが、被告は有給休暇が無い労働契約環境にあり、出頭に掛かる費用と休業による損害で二重の負担が発生する。

 代理人を任ずることも、遠隔地のため、多大な困難が予想される。

3 一方原告は、東京都渋谷区内に東京支社および東京店を有し、原告WEBサイト上にて「グループ年商92億円。グループ総資本1億4,700万円」を謳う大企業である。

 また、本件とは別事件においてではあるが、原告は藤原朋奈弁護士を代理人として、被告がサーバーを借りているサーバー管理会社に通知書を送るなどしている。藤原弁護士は、東京に事務所を置く弁護士である(疎甲第1号証)。

4 よって、本件訴訟については当事者の公平を図る必要性から、民事訴訟法第17条により、職権で東京地方裁判所に移送していただくよう申し上げ致します。

疎明資料

疎甲第1号証 日弁連WEBサイトの弁護士情報(写)

平成16年(ワ)第510号 損害賠償請求事件
原告 株式会社ウェデイング
被告 吉本敏洋

移送申立に対する意見書

平成16年4月7日

京都地方裁判所第6民事部い係B御中

原告訴訟代理人 弁護士 南    聡
同 弁護士 小川 顕彰

意見の趣旨

 本件移送申立を却下する
との決定を求める。

意見の理由

1 訴訟遅延のおそれはない。
 被告は、本件訴訟が、事案の性質上、長期化するおそれがあり、被告住所地が京都地方裁判所から遠隔地であることと合わせて、著しい訴訟遅延を招くおそれがあると主張する。

 しかし、本件訴訟は、インターネット上の電子掲示板上の書き込みについて、当該電子掲示板管理人である被告の責任を問うものであるが、このような事案については、すでにいくつもの前例が存在しており、現時点で新たな憲法上の法律論が展開される可能性は低い。

 したがって、そもそも本件訴訟が長期化する蓋然性は現時点では高いとはいえない。

 また、被告は、遠隔地であるが故に当事者の日程調整が難航する結果、訴訟遅延を招くおそれがあると主張するが、移送決定がなされれば原告側にとって遠隔地となり、やはり日程調整が難航するのであって、移送決定の前後で日程調整が難航する状況に変化は生じない。

 したがって、日程調整の難航は移送申立の理由足り得ない。

2 被告が個人であることは、移送の理由とはならない。

 確かに、原告は法人であり被告は個人であるが、そのことのみをもって原告と被告との衡平がとれないということはない。

 被告が京都地方裁判所へ出頭する時間的・経済的負担と、原告が東京地方裁判所へ出頭する時間的・経済的負担に大差はない。

 また、被告が将来的に訴訟代理人を選任する蓋然性は極めて高く、代理人が選任されれば、被告が京都地方裁判所へ出頭することによる時間的制約は問題とはならない。

 さらに、被告が京都地方裁判所への出頭が容易な弁護士を代理人として選任することにさほどの困難はない。

 被告は、原告が別件で第一東京弁護士会所属の弁護士を代理人に選任している事実を移送申立書の中で指摘しているが、その事実が本件訴訟との関係でどのような位置づけになるのか明らかではなく、本件移送申立の判断に影響を及ぽすものではない。

3 証拠の偏在は存在しない

 本件訴訟において、京都地方裁判所で訴訟を行うことが不適当な程の証拠の偏在という事情は認められない。

4 よって、本件訴訟において、被告が主張する事由で本件を東京地方裁判所へ移送する必要性は乏しく、本件移送申立は却下されるべきである。

以上


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