5月9日のトピックスでは、産経新聞社の「無断転載は、著作権侵害である」と言う主張に対し、「そもそも、元の記事は著作物では無い」と反論しました。さらに第二の反論として「仮に著作物であるとしても、正当な引用の範囲内である」と主張します。

そのためには、「正当な引用」について考えなければなりません。著作権法第三十二条によると、

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

となっています。「公正な慣行」が問題ですので、実際、どのような引用なら許される(と考えられる)のか、例をあげて見ていきたいと思います。一応、判例などから考えると、以下の2条件は最低限の慣行のようです。

  1. 引用がどこか、明瞭に区別出来ること
  2. 引用部分が、主従関係の従であること

まず、書籍について考えて見ます。ある一つのテーマについて書かれている書籍の見開きが、図1の様な構成になっていたとします。この時、「2ページ目は引用の方が多いので、正当な引用では無い」と言えるでしょうか?私は「正当な引用である」と思います。なぜならば、1ページ目と2ページ目(たぶん3ページ目以降も)は、同じ一つの文章であり、書籍としての「まとまり」で考えた場合、引用部分が従だからです。

図1

では、図2の様な構成になっていたとします。巻末や章末に参考資料を連続して掲載する場合もありますから、そのようなイメージです。この場合も、書籍全体が一つの「まとまり」ですから、正当な引用だと思います。

図2

そもそも、書籍においてのページ分けは、書くスペースが足りないと言う物理的な制限から生まれるものです。偶然的なページ分けで、著作権侵害になったりならなかったりするのでは、安心して本を出すことも出来ません(もし、侵害になったりするのでしたら、不合理だと思います)。

次に、物理的制限の無いHTMLファイルについて考えて見ます。まあ、制限が無いと言っても、あまり大きなファイルだと読み込むのも大変ですから、普通は適当な範囲で分割します。たとえばZDNet は、記事を複数のHTMLファイルに分割して掲載することがあります。ここで、一つの記事が図3の様な構成になっていたとします(結局のところ、ファイルはブラウザの画面として表示されるので、画面1、画面2と表現しました)。画面2は、著作権侵害になるのでしょうか?私は、書籍と同じ理由でならないと思います。

図3

さらに、ハイパーテキストの特性を生かして、図4のようになっていたとします。画面3には、引用した図しか存在しません。その場合も、私は「画面3も記事の内容全体の一部であるから、正当な引用である」と考えます。

図4

こういった場合、どのような範囲で「まとまり」を考えるべきでしょうか?ハイパーテキストだと、どっからどこまでが「まとまり」なのか良く分かりません(逆に、まとまりが無いのが、真のハイパーテキスト)。私は、「まとまり」は著者とテーマで総合的に判断しなければならないと考えます。

ここで、WEBの慣行では、HTMLファイル(または画面と呼んでも良い)1つを「ページ」と呼び、同じテーマのページの集合を「サイト」と呼ぶことを思い起こす必要があります。用語と言うのは良く考えられたもの、HTMLファイル1つは、書籍の1ページに相当するのでは無いでしょうか?つまり、WEB上での「まとまり」とはサイトのことであり、正当な引用かどうかを判断するのもサイト単位で考えなければならない、と言うことです。

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さらに言うなら、ニュース記事を一つのHTMLにしておく必然性は無く、日付ごとに表示する他、トピックスに埋め込んだり、設定を変更すれば掲示板の投稿と同列に表示することも可能です(運用上の都合で、OFFにしています)。ページ分けは、単に利用者の利便性のためです。それに、最近の掲示板は特定の発言のみを選択的に表示出来ますが(弊サイトの掲示板も出来ます)、適当に抜き出して「この発言は、著作権侵害である」と言えるとすると、自由な議論が阻害されます。そのような、恣意的な抽出が許される社会に住みたいとは思いませんし、現在の著作権法(の運用)がそのようなものではないと確信しています。

皆様は、いかがお考えでしょうか?


ハイパーテキスト - 複数のテキスト/コンテンツをリンクで結び、相互に参照できるようにした形式のこと。HTMLは、ハイパーテキスト・マークアップ言語の略称(HyperText Markup Language)。

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